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さて、来年の今頃は・・・
あるいは、当てにならない未来予想図
読書メモ「世界金融危機」
2008/11/08 [Sat]20:33
category:読書メモ
世界金融危機 (岩波ブックレット NO. 740)世界金融危機 (岩波ブックレット NO. 740)
(2008/10)
金子 勝アンドリュー・デウィット

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今年(2008年9月)に表面化した昨年7月のサブプライムローンの崩壊に端を発した米国発の金融危機を見事に予言した書籍である。
内容は、岩波書店の総合誌「世界」に連載されたものをブックレット形式でまとめたものだが、その中身はしっかりしたデータに裏打ちされた、竹中平蔵を代表とする市場原理主義者も真っ青な「骨太な」内容となっている。
残念なのは、サブプライムローンが発覚以前から著者である金子勝氏を代表とする心ある経済学者(と、あえて言わせてもらう)が米国の住宅バブル崩壊を警告してきたにもかかわらず、市場原理主義的な考えを良しとする人脈が政権中枢を担い続けてしまった結果(2回も政権を放り出したのに)、楽観的で無責任な改革路線を軌道修正することもなく、やすやすと現在の金融危機に飛び込んでいってしまった。
あらためて、その原因は何だったのかを知るのに、質が高く簡潔かつ手ごろな分量でまとめられた良書であると思う。何年か先、もう一度読み直す必要が出てくる種類の書籍であろう。

テーマ:読書メモ - ジャンル:本・雑誌

読書メモ「「女縁」を生きた女たち」
2008/10/04 [Sat]00:19
category:読書メモ
「女縁」を生きた女たち (岩波現代文庫―社会)「女縁」を生きた女たち (岩波現代文庫―社会)
(2008/09/17)
上野 千鶴子

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本日読了。
20年前の「専業」主婦に対する社会学的フィールドワークレポートとその当時対象となった方々のその後、それに当時の将来予想に対する検証という3部構成からなる書籍である。
20年前と言えばバブル時代後半。
社会全体が根拠のない明るさのなかにあったことは自分の記憶の中にも残っている。
その当時の40才代を中心とした専業主婦のどのような人たちが、夫が会社に出かけている間に、「亭主元気で留守がいい」をそのままに、それぞれ「縁」(ここではそれを「女縁」と言っている)をむすび、それぞれの生き方を外に開き、ネットワークを生み出していったかを実証的なデータを裏付けとして、描き出している。
またそれを20年たった現在から今日的な目で歴史的意義を考えたとき、「すべての歴史的な現象と同様、女縁もまた、世代と時代と年齢の産物である」ことからは逃れられないという現実があることも確かである。その上で、やはりあの時代を生きた女性たちのその後の生き方も含めて、非常に有意義であったと理解させてくれる書籍である。

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